レニ・リーフェンシュタール

レニ・リーフェンシュタールのドキュメント映画『レニ』を鑑賞しおえる。レニという女性の、その小さな体躯のどこに秘められているのだろうかと思えるほどの、壮絶な好奇心に終始圧倒された。第二次大戦を生き、映画監督としてナチへの関与を問われ、最後までその重荷を背負いつつも、次々と新しい境地を切り開いて行くその行動力に、己の直感に従って蕩尽する一人の人間の生命の躍動を感じた。
特に60歳になってから、スーダンのヌバ族の集落への撮影を敢行、彼らの風俗や美学をつぶさに記録しては、何度も滞在しては親密に交流を深め、70歳になるとダイビングのライセンスを年齢を20歳偽って取得し、90歳になるまで潜り続けては深海の神秘に触れながら、その映像をカメラに納め続ける――その姿には超人的な力がみなぎっていて、そしてその瞳の爛々と輝く様子を見るや、この人は世界を自分の目で知りたいんだ、美しいものを自分の目で知りたいんだというのがガンガン伝わってくるのであった。
ナチ映画『意志の勝利』を監督・撮影したことにより、ナチ同調者のレッテルを貼られ、その死までその責め苦を味わいながらも、烈しく、逞しく生きぬいた姿に、静かな感動が刻まれる。
そういえば、また養老孟司になるけれど、今日、高野和明『幽霊人命救助隊』の解説で「現代人は結果がわかってないと行動しない。結果がわかってることしかしない、しちゃいけない、そう思いこんでいるから、人生が開けない」とのたまわっているのを読んで、レニのことと重なって、なおさらその感を深めたのだった。
Curiosity killed the cat(好奇心猫をも殺す)、たしかにレニだってヒトラーとの邂逅が結果としてそうだったのだろうけれど、好奇心のない猫なんて全くおもしろくないのだ。人生、かくありたし、という映画なのであった。『アフリカへの想い』も観なければ。