PETER FINGER

今日は曙橋のBACK IN TOWNでピーターフィンガーのライブを聴いた。
フィンガースタイルのアコースティックギターミュージックという、今でこそ巷に氾濫している一つの音楽領域において、ささやかではあるが確実な達成を積み上げている人。アコースティックギター1本で奏でる音楽を、ヨーロッパの音楽的伝統を踏襲した上で独創的に練り上げて芸術の領域まで引き上げた燦然と輝く巨星、それがピーターフィンガーだ。
本日の演奏は、50歳の大台も半ばにいたって、寄る年波のせいもあるのだろう、激しい曲の中でミスタッチがいくつか見られはしたものの、例えば「We Meet Again」に見られる、おそろしいほどまでに統制されたリリシズムに静かな感動を覚えるのである。
自分もそうだが、ある種の人間にとって、一般に通暁されているような音楽というのはそれだけで敬遠してしまうものなのだ。
人知れず密かな場所で、密かな音楽的な胎動により、密かな、しかし確実な燭光を放っている音楽を見つけ出したい、そして愛したいという願望が自分にはある。衆目の手垢で愛でられるようになった音楽は、自分がわざわざ耳を鍛えて良さを探しにいかずとも、すんなり耳に届く良さがあるもので、それはそれで全然良いと思う。
19の頃、ピーターフィンガーの楽譜や音源を仲介業者から取り寄せて耳にしてから、自分の耳は確実に変わった。
そんなフィンガーにとても感謝しているし、自分にとってひたいに印のある麒麟児なのであった。