ボローニャ絵本展にて

今日は板橋区立美術館ボローニャ国際絵本原画展に行ってきた。なかなかの盛況ぶり。
緻密に描かれたものから、洗練された落書きのような作品まで多種多様な魂の放出が見られて結構だった。
気に入ったのはジャラルディーヌ・アリビューの「一番近くにある太陽」、ニーナブリューンヒャルト(Nina Blychert)の「虫歯菌」などなど。ニーナの作品は日本じゃ板橋区立美術館以外では売ってないけれど、虫歯菌をコミカルかるグロテスクに仕上げた幼児恐怖絵本(そんなジャンルはあるのかしらないが)の傑作だと思う。
自身、絵本を描いていて、現在表参道(ファンナーン・ギャラリー)で展示中だけれど、今後の描画手法を考える上で随分と脳味噌をときほぐしてくれた。秀逸な絵本作品は、秀逸な文学と同様に完結した世界観「ここではない、どこか」あるいは「どこかのような、いまここ」を提示してくれる。読者はただ作者の提示する物語に頭から没入すればいい。そこから抜け出したときに視点がぐっと高くなってるようだったら、それはとてもよい読書体験だ。
最近はドストエフスキーばかり読んでいる。人間のろくでもない部分をえもいわれない微妙なニュアンスでしっかり吐ききっている当たりがやはり希代の作家たらしめいているのだろう。工藤精一郎が死んだ。彼の訳出するところの『罪と罰』は自分としては外国文学の最高傑作である。『白痴』を読み終わり、今は『地下室の手記』。年内には全作品を読破する。
そして今日はまた一つ、新しい出発を決めた。東京の真夏の曇天には星が見えない。