PETER FINGER

密やかに光明を放っているものが好きだ。
広く大衆の手垢にまみれないことによって通俗化を免れているもの。
大衆の厳しい視線を逃れながらもけして安易な自己模倣や自己満足に堕していないもの。
音楽でいうなら、文句なくピーターフィンガーの奏でるものだ。
フィンガースタイル・アコースティック・ギターという、それ自体密やかな分野の、
密やかなる麒麟児こそフィンガーなのであって、そのEBEGADチューニングから驟雨のように放たれる魔的に美しい旋律とDAEGADチューニングから弾むように繰り出される軽快にして力強い音律が何とも気分を高揚させてくれる。
彼のLP時代の古い作品はいずれも絶版にして日本ではまず手に入らないものだけれど、彼が立ち上げたインディーズレーベルであるAcoustic Music Record社の作品群は『プー横町』などの専門通販あるいはAmazonHMVで購入できる。
フィンガースタイルのアコースティック・ギターを愛する者なら是が非でも聴くべきであるし、彼の音楽はフィンガースタイルギターという狭い枠を超えてある種の普遍性を持ってるとおれは思う。
今は彼の『midnight mood』と『come to my window』『open strings』を練習している。
いずれも大変むずかしくあるけれど、弾いていて迸ってくるこのえもいわれない感じは焦燥も理不尽も悲しみも一挙に吹き飛ばして雲間から光明が刺すようだ。
小さな密やかなる光明。小密光と呼ぼう。ああなんだか新興宗教みたいだ。